西陣の縫製工房「糸結い」は、西陣織の問屋街の一角にある、築六十年の町家の二階にあります。工房に入ると、ミシンの音と、生地の匂いがします。田中文子さんは、三十年以上この場所で服を縫っています。
田中文子さんの仕事 ¶
田中さんは、一日に縫える量を決めています。「急いで縫った服は、着ているとわかる」と言います。Jubilant Pinegladeのアイテムは、一型につき三着。田中さんが一週間かけて縫います。縫い代の処理、ボタンホールの位置、裏地の付け方。すべてに田中さんの判断が入っています。
パターンと生地の対話 ¶
田中さんとの協働を始めてから、島崎晴樹はパターンを自分で引くようになりました。「生地が先にあって、パターンはその生地のために引く」という考え方は、田中さんとの対話から生まれました。生地によって、縫い代の幅も、縫い目の間隔も変わります。リネンとツイードでは、縫い方が根本的に異なります。
工房の一日 ¶
田中さんの一日は、朝九時に始まります。まず前日の仕事を確認し、その日縫うアイテムの生地を広げます。昼は近くの定食屋で食べ、午後三時に一度手を止めてお茶を飲みます。夕方五時に仕事を終えます。この規則正しさが、仕事の質を保っていると田中さんは言います。
長く着られる縫製とは ¶
田中さんが特に気を使うのは、縫い代の処理です。表から見えない部分ですが、ここが丁寧かどうかで、服の寿命が変わります。ほつれにくい縫い代の処理、洗濯に耐えるボタンの付け方。これらは、着る人が気づかないところで、服を長持ちさせています。当店のお直しを「糸結い」に依頼するのも、元の縫製と同じ手で直してもらうためです。
田中さんの工房を訪ねるたびに、服を作ることの時間と手間を実感します。その時間と手間が、着る人に届くことを願っています。