奄美大島の泥染めは、車輪梅(テーチ木)の樹皮から取った染料と、奄美の赤土を使った染色技法です。この二つの素材の組み合わせは、奄美の気候と土壌に固有のもので、他の場所では再現できません。染め師の山田義雄さんの工房を訪ねたときに教わったことをもとに、その工程を紹介します。
車輪梅(テーチ木)とは ¶
車輪梅は、奄美大島に自生するバラ科の植物です。その樹皮を煮出した液体が、泥染めの第一の染料になります。タンニンを多く含むこの液体に生地を浸すことで、繊維にタンニンが定着します。この工程を「テーチ木染め」と呼びます。山田さんの工房では、樹皮の煮出し時間と濃度を、季節と生地の種類によって調整しています。
赤土との反応 ¶
テーチ木染めをした生地を、奄美の赤土の泥の中に浸します。赤土に含まれる鉄分が、タンニンと反応して、独特の深い茶褐色を生み出します。この反応は、奄美の赤土の鉄分含有量と、テーチ木のタンニン濃度の組み合わせによるもので、他の土地の土では同じ色は出ません。泥に浸す時間と回数によって、色の深さが変わります。
染めと洗いの繰り返し ¶
泥染めは、テーチ木染めと泥への浸漬を交互に繰り返す工程です。山田さんの工房では、この工程を最低でも十五回繰り返します。一回ごとに色が少し深くなり、繊維への定着が強くなります。この繰り返しの工程が、泥染めの堅牢度の高さにつながっています。洗濯を重ねても色が大きく落ちないのは、この工程の丁寧さによるものです。
なぜ染めるたびに色が違うのか ¶
同じ工程を踏んでも、染めるたびに色が微妙に異なります。これは、季節によって赤土の状態が変わること、テーチ木の樹皮の成熟度が異なること、そして気温と湿度が反応に影響することによります。山田さんは「同じ色は二度と出ない」と言います。当店が一型三着の制限を設けているのも、この染めの性質と無関係ではありません。
泥染めのアイテムを手にするとき、その色の背景にある工程と、奄美の土と植物のことを少し思い出してもらえると、着る楽しみが増えるかもしれません。